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小説という名の日記B(栞機能無し)
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「もっと分かるように説明してくれないか」

「詰まり、あなたの命と引き換えという事です。十二時間間隔で飲めば一年後、間隔を詰めて飲めばそれだけ早く。この薬がなくなった時点から二週間後に、あなたは亡くなります」

男が妖艶に微笑んだ。



何ともまあ突飛な話だ。
到底信じられない。
信じようとも思わない。

だが話自体は面白く、興味を惹かれる。
老い先短い年寄りが命を引き換えにされても、それが代償となるとは思えない。
もし若返りが本当なら随分と安い代償だと思う。

だが矢張り詐欺師は詐欺師だ。
矛盾している事に気付いてない。

「俺が一年以内に死んだら?命と引き換えにならないんじゃかないか?」

一年間生きていられる保証はない。
いつ迎えが来てもおかしくない年齢。
泰造はここぞとばかりに矛盾を追及した。



だが男の態度は変わらなかった。
平然としており、動揺が微塵も感じられない。

「あなたの寿命は百一歳です。なのであと十五年と少し生きていられます。因みに百歳になっても、まだあなたは健勝であられますね」

男はいとも容易く矛盾を解決した。

妄想癖でもあるのだろうか。
そう思わざるを得ないほど、つらつらと淀みなく答えてくる。
だが流石に泰造が百一まで生きると言われれば、興味を通り越し、呆れが混ざってくる。

「信じる訳がなかろう」

思わず本音が零れた。



その本音は男の耳にもしっかり届いていたらしい。
ではあなたについて少しお話をしましょうか。
そう言って男がゆっくりと口を開いた。

「鹿沼陽也、御存知ですよね。何故ならあなたはこの少年に恋をしている」

泰造は大きく目を瞠った。

何故この男が陽也の事を知っている?
陽也の事は誰にも打ち明けてない。
打ち明けられるような人物がない。
まさか陽也から聞いたのか?
いや、それはない。
陽也は無闇矢鱈に誰かに話すような性格ではない。
ならば何故。
何故この男が知っているのか。





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あきゅろす。
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