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小説という名の日記B(栞機能無し)
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余程自信があるらしい。
堂々と胸を張っている。
今、老人を狙った詐欺が流行っている。
幾ら周囲との関わりがないと言っても、情報はテレビから入ってくる。
この男が詐欺師である可能性は高い。
詐欺師ならば警察に突き出してやる。

しかもこの男は泰造の名字を知っている。
泰造の家は表札を掲げてない。
何故この男が泰造の名字を知っているのか。
妙な格好といい、名字の事といい、この男には不審な点が多すぎる。
泰造は警戒を怠らずに、男の話を聞く事にした。



「津金様にとっておきのお薬を用意致しました」

ほらきた。詐欺師だ。
どうやって騙すのか、その手口をとくと見せて貰おう。

「ほう、どんな薬だね?」

如何にも興味を唆られた口振りでその男を見遣る。
その男は泰造の目を真っ直ぐに見返し、自信たっぷりに言い切った。

「肉体を若返らせる薬です」



余りにも予想外な言葉に、心臓が脈を打った。

肉体を若返らせる。
それは泰造のたっての願い。
陽也と同じ年齢になりたいと切に願っていた。
そしてそれは現実では不可能なこと。
幾ら願っても叶わないこと。

だからこれは老人を狙った新手の詐欺に違いない。

老人の全てとは言わないが、若返りたいと願う者は多い。
だが自然の法則には逆らえない。
どんなに願っても、若返る可能性は全くない。
だからそんな手に引っ掛かる訳がない。

よし、証拠を掴んで警察に突き出してやろう。
泰造は内心ほくそ笑みながら、あくまでも穏やかに話し掛けた。

「ほう、そんな薬が?信じられないな。本当にあるというのなら、実際に見せて貰おうか」





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あきゅろす。
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