小説という名の日記B(栞機能無し)
19
余生を送るだけの日々に新たに噴き出した情熱は、おいそれとは消えずにいた。
それどころかどんどん酷くなってくる。
独りきりの家。
語り合う者は誰もいない。
迎えが来るだけだと人生を悟ったように過ごしてきた毎日。
今までどうしてそう過ごしてこれたのだろう。
今となってはとても無理な話だった。
彼が愛おしい。
若い頃よりは衰えたが、性欲もまだある。
尤もこれは彼に恋心を抱いてから復活したものだ。
彼が好きだ。
彼に会いたい。
陽也の事ばかりが、泰造の頭の中を占めている。
だが陽也は友達になることすら断った。
友達になるのに性別は関係ない。
陽也が断ったのは年齢差が理由だった。
泰造の年齢が陽也の年齢とは程遠いという理由。
泰造が年寄りだと言う事を突き付けていた。
性別以前の問題で友達になる事すら断られた。
だがそれはその延長線上に交際という可能性があったからだろう。
交際の可能性が全くないのに、変に期待を持たるのは申し訳ないと思ったのかもしれない。
仮定ではなく断定出来る。
何故なら陽也はそういう性格だ。
いろんな方向から考えて出した結論だろう。
そう思うだけに、尚更年齢差で断られた事が胸にこたえた。
陽也と同じ年代になりたい。
せめて恋愛対象となれる年齢になりたい。
友達として付き合っていけるくらいの年齢になりたい。
人生をやり直すのでは意味がない。
過去に戻りたい訳ではない。
陽也の居る現在でなければ意味がない。
若返りたい。
若くなって陽也と会いたい。
そうすればきっと陽也は友達になってくれる。
有り得ない。有り得る訳がない。
現実ではその願いは叶わない。
それでも若くなりたいと切に願わないではいられない。
陽也は泰造の生きる意味なのだから。
だが現実は陽也に友達になる事さえ断られ、こうして胸が張り裂けそうになっている。
あれほど大切にしていたガーベラも、泰造の心を癒してくれくなっていた。
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