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小説という名の日記B(栞機能無し)
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何のことか分からなかったらしい。
言葉を重ねれば、ああ、と思い当たった様子でにこりと微笑んだ。

「あの時はすみません。あいつとは仲直り出来たんで気にしないでください。あっ、もしかして話って、俺の事を心配してくださったんですか?」

その時ちょうど公園のベンチに着いた為、其処に座るように促した。
陽也が座るのを待って、泰造は話を続ける。

「心配なのもあったんだが、大事な話があって陽也君に会いにきたんだ」



今からが本番だ。
柄にもなく緊張している。
迎えを待つだけだと思っていた自分が、こんなにも生きている事を実感するようになるとは。
緊張を解すため大きく息を吐き出す。
そして姿勢を正して口を開いた。

「陽也君が好きになりました。よければお付き合い願えませんか」

ぽかんと陽也の口が開いた。
何て可愛い表情をするのだろう。
驚いているのが素直に態度に表れている。
頬が緩みそうになったが、返事がまだだと気を引き締めなおした。



まだ驚いているらしい。
漸く我に返ったかと思えば、視線が彼方此方を彷徨っている。
だが覚悟を決めたのか、泰造と目を合わせると怖ず怖ずと口を開いた。

「あの・・・」

「うん?」

「その・・・、好きってのはどういう意味で?お付き合いというのはどういう意味で?」

なるほど、陽也は泰造の恋心を理解しかねているらしい。
それもそうだ。
泰造も自分が同性の、しかも七十も年下の少年を好きになるとは思ってもいなかった。
こうして告白に来たのも、充実した余生を送りたいと願ったからだ。
陽也が信じられないのも無理のないことだと思う。

「陽也君に恋をしています。恋人としてお付き合い願えればと思っています」

もう一度姿勢を正して返事を待った。





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あきゅろす。
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