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小説という名の日記B(栞機能無し)
15


立ち止まった陽也が振り返った。
久々に見る顔。
その瞳が泰造を映している。
漸く陽也に会えた。
胸をときめかせながら陽也に近付く。

陽也は束の間訝しげな顔をした後、思い当たったように呟いた。

「ええと、花の家の・・・」

思い出して貰えた事が嬉しい。
なにせ一度しか喋った事がないのだ。
陽也の記憶に泰造の顔が残らない可能性もあると少し不安だっただけに、内心安堵していた。

そうですよ、とにこやかに微笑んだ泰造に、陽也が不思議そうな顔で問うてくる。

「どうかされたんですか?散歩とか用事とか」

陽也は偶然出会ったのだと思っているようだった。



「いや、陽也君に話したい事があって会いにきたんだ」

「俺に・・・?」

まさか自分に会いに来たとは露ほども思ってなかったらしい。
面食らったような表情の後、訝しげな顔になった。

「出来れば二人で話したいんだが」

泰造がそう訴えると、暫く躊躇していたものの、にっこりと微笑んで頷いてくれる。

「但し人目のある場所でも構いませんか?構わなければ近くに公園があるので」

聡明な選択だと思った。



この近くの公園なら泰造も知っている。
この辺りは泰造の生活圏内だ。
と言ってもそう滅多に来ることはないのだが。

その近くの公園は大きくもなく小さくもない。
母親が子供を遊ばせている姿も見受けられる。
ベンチもあり、其処なら落ち着いて話も出来る。

陽也と共にその公園へと向かった。
その途中で、気懸かりだった事を尋ねてみた。

「友達とは仲直り出来たのかい?」

「仲直りですか?」

「ほら、入院している恋人のいる彼と」





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