小説という名の日記B(栞機能無し)
14
藍塔高校の門が見えてきた。
生徒が出て来る気配は全くない。
まだ授業中のようだった。
体育の授業を行っているのだろう。
生徒の声が遠くから飛び交っている。
まだ時間があるのならと、学校の外を一周してみることにした。
壁伝いに右回りで歩いていく。
まだ半分も歩いていないところで、泰造は足を止めた。
正門ではないが其処にも門がある。
裏門という存在を失念していた。
此方から出て来る可能性もある。
正門で待つべきか裏門で待つべきか、暫し悩んだ。
だが裏門から出ても、泰造の家を通る為には正門を過ぎなければならない。
ならば矢張り正門の辺りで待つのが確実と言えよう。
正門と裏門の他に出入口は見当たらない。
一周し終え、結局正門で待つことにした。
それから直ぐだった。
チャイムが鳴り、校舎からざわめきが聞こえてくる。
いよいよだ。
いよいよ陽也に会える。
ついに待望の告白の時がきた。
生徒達が次々に出て来る。
何年生かが分からない。
出て来る生徒が何年生か分かれば、陽也の事を聞けるが、泰造には学年の違いまでは分からない。
花を盗りに来ていた少女達の顔は毎回違っていた為覚えてないが、ユウジと呼ばれていた男子生徒の顔なら覚えている。
ユウジが来れば陽也を連れてきて貰うよう頼めるのだが。
陽也とユウジを探しながら、通り行く学生達を眺めた。
不意に胸が高鳴った。
校門から出て来た生徒が「じゃあね」と言葉を交わし、泰造のいる反対側へと歩いていく。
その声もその顔も、泰造が待ち望んでいた人物のものだった。
校門でユウジと別れた陽也が帰って行く。
泰造は慌てて陽也を追い掛けた。
「陽也君」
呼び掛けたが振り向かない。
「陽也君」
もう一度大きな声で呼び掛けた。
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