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小説という名の日記B(栞機能無し)
13


藍塔高校一年、鹿沼陽也。
性格を除き、泰造の知っている情報はこれだけだった。

住所も電話番号も知らない。
陽也に会う為には学校へ行くしか方法がない。
藍塔高校は近所だから、何処にあるかは知っている。
そして其処へ行けば陽也と会える。

草臥れた格好で陽也と会いたくない。
いそいそと一張羅に着替え、髪にもたっぷりと整髪料をつけた。

昨日染めた髪。
昨日までは真っ白だった。
白髪しかなかった。
髪自体だいぶ薄くなった。
だが染めたことにより、だいぶ若く見えるようになった。
それは泰造の気の所為ではないと願いたい。

妻が亡くなってから十年、誰とも触れ合って来なかった。
だから身嗜みすら整える必要がなかった。
今更染めても気恥ずかしいものがある。
それでも少しでも若く見せたくて黒く染めてみた。
どうせなら陽也と知り合う前に黒く染めておけばよかったと、今更ながらに思った。



浮かれながら支度を終え、靴箱から仕舞っておいた革靴を取り出す。
これも昨日の内に手入れをしていた。
鈍い光沢を放つ革靴を履き、戸締まりを済ませて家を出る。

高校生の彼らは、夕方に花を手折りにやってきていた。
制服だったとは言え、その時間に学校が終わるとは限らない。
暫し雑談に興じてから訪れている可能性を考慮し、だいぶ早めに家を出た。

何か贈り物を、とも思ったが、却って陽也に気を遣わせそうな気もする。
告白をするだけだ。
振られる可能性だってある。
なにせ一日しか話したことがない。
泰造は以前から陽也を知っているが、陽也からしてみればたった一日しか泰造と会った事がない。
だから可能性としては振られる方が高いだろう。

それでも、と思う。
それでも交際出来る可能性が少しでもあるのなら。
告白する価値はある。

















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