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小説という名の日記B(栞機能無し)
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案の定、情に絆された陽也は帰ると言い出せなくなっていた。

「それじゃあちょっとだけ」

困ったなあ、と顔に少しだけ表れているが、それでも泰造の申し出に頷いてくれる。
それを微笑ましく思いながら、その情に付け込んだ。

居間に案内し、茶と茶菓子を用意する。
戸棚には饅頭しかなく、日頃から若者が好みそうな物を買っておくべきだったと後悔した。

だが好き嫌いはないからと、陽也が饅頭を手に取ってくれる。
それが嬉しくなり、まだ他にもある旨を伝えれば、腹に溜まるからと丁重に断られた。



陽也の話によれば、友人の恋人が明日の検査の結果次第で、来週にも退院出来るらしい。
だからもうガーベラが手折られることはない。
もっと早く友人に言うべきだったが、勇気が出なかった。
本当は友人は優しいのだと、恋人を喜ばせたかっただけなのだと、友人をも庇う。
ガーベラを無断で手折った事を申し訳なく思う一方で、友人をも大切にする。
泰造の立場からも友人の立場からも、物事を考えている。
その思慮深さが眩しい。





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