小説という名の日記B(栞機能無し)
7
草むしりといっても定期的に泰造が行っている為、それほど草は生えてない。
ハルヤを連れ門を潜る。
そして竹塀の近くに、申し訳程度に生えている雑草の処理を頼んだ。
ハルヤが嬉々として雑草を抜いていく。
罪滅ぼしが出来た事を喜んでいるようだ。
その純粋な心が、またもや泰造の胸を高鳴らせる。
この胸の高鳴りはなんだろう。
この感覚は身に覚えがある。
両親に反対された十歳年上の妻との交際。
妻とは大恋愛だった。
年の差も気にならず結婚まで至った。
今となっては懐かしい思い出。
遥か昔の甘酸っぱい青春。
「終わりました」
自分の感情に戸惑いながらも、笑顔を向けてくる彼に礼を述べた。
「手を洗わないといけないな。ついてきなさい」
まだ帰したくない。
もう少し話をしたい。
決して疚しい気持ちではなかったが、彼とまだ一緒に居たかった。
「え、これくらい大丈夫です」
「駄目だ。何処から菌が入るかも分からない。手を洗ってから帰りなさい」
譲らない泰造にハルヤも諦めたらしい。
それじゃあお邪魔します。
そう言って泰造の後を付いて来た。
「俺は津金と言う。君は何て名前だね?」
漸くハルヤの名前が知れる。
少年がハルヤという名前だと知ってから、毎日どんな漢字を書くのか考えていた。
晴哉、春也、春哉、治也、治弥。
いろんな漢字を当てはめてみては、本当の漢字が知りたいと思った。
ハルヤの名字は何だろうとも思った。
年甲斐もなく心が浮き立っている。
心を踊らせながら、ハルヤの返事を待った。
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