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小説という名の日記B(栞機能無し)
6


このままだとハルヤが悪者にされる。
自分が出て行かねば、集団はもっとハルヤを攻撃する。
泰造は外へ出ることにした。

塀沿いに門へ向かう。
その間にもハルヤを責める声が聞こえてきた。

「分かった、もういい。陽也って友達甲斐のない奴だったんだな」

ねえ、もうカヌマなんか放っといて行こうよ。
あんまり遅いと面会時間少なくなっちゃうよ。
ユウジの捨て台詞と共に、口々に聞こえてくる少女達の声。

どんどんざわめきが遠くなっていく。
目の先で繰り広げられた口論は、泰造が近付く前に終わってしまった。



一人ハルヤだけが取り残されていた。
茎しかないガーベラを見て、重い息を吐き出している。
泰造はそのままハルヤに近付いていった。

泰造に気付いたハルヤが不審げな眼差しで見つめてくる。
ハルヤを警戒させないように、なるべく口許に笑みを浮かべた。

「ガーベラを助けてくれてありがとう。このガーベラが咲いてるとこはまだこの家の敷地内だから、君が彼等に言ってくれて嬉しかった」

ハルヤが軽く目を瞠る。
この家の住人登場に驚いている。
泰造がこの家の持ち主だと知って、直ぐに申し訳なさそうな顔になった。



「ごめんなさい、友達が勝手に花を盗っちゃって」

「君が罪悪感に駆られる必要はない。君はガーベラを助けてくれた。ガーベラを育ててきた俺の気持ちも助けてくれた」

優しく語り掛けるが、申し訳なさそうな彼の表情は変わらない。
困った。彼と話せて嬉しい。
申し訳なさそうにしている彼には悪いが、話す事が出来て喜んでいる。
だが彼に罪悪感を抱かせるのは本意ではない。
本当にごめんなさいと謝る彼に、一つ提案を申し出た。

「ならば少し庭の草むしりを手伝って貰えないだろうか」

彼が笑顔になる。
その笑顔に泰造の胸が高鳴った。
ガーベラよりも魅力的な笑顔だ。
そう思わずにはいられなかった。





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あきゅろす。
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