[携帯モード] [URL送信]

小説という名の日記B(栞機能無し)
3


その中で一人だけ、何も言わない生徒がいた。
二人の男子生徒のうちの、花を手折らない生徒の方が、いつも何かを言いたげにしては言葉を飲み込んでいる。
花を手折り生徒達が病院へ向かう中、その男子生徒だけが暫くそこから動かず、軈てこちらに向かい頭を下げてから、他の生徒達を追い掛けていく。
毎回その男子生徒だけがそうしていた。

花に謝っているのだろう。
垣根の隙間から覗いていた泰造は、そう思いながらも、自分に頭を下げてくれているような気がした。
そしてその男子生徒の存在に救われた気がした。

何度花を手折るのを止めてくれと言おうと思ったか分からない。
だが恋人を想いながら手折る男子生徒の表情と、その男子生徒に対する女子生徒達の賞賛が、泰造を思いとどまらせていた。
本当は手折られたくなどない。
だがこの若者達は入院している恋人を元気付ける為に手折っている。
それに若者に注意しても、きっと受け入れてはくれまい。

その複雑な胸中が、あの頭を下げてくれる男子生徒のお陰でいつも救われていた。
泰造に謝ってくれているような気がして嬉しかった。
そしてその男子生徒を見るのが楽しみになっていた。















[*前へ][次へ#]

3/81ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!