[携帯モード] [URL送信]

小説という名の日記B(栞機能無し)
2


泰造は毎朝ガーベラを見る為に、ぐるりと竹塀の外を回っている。
いつものように、虫がついてないか注意を払いながら見ていった。
だがピンクの花を咲かせているガーベラの前で、足を止め眉間に皺を寄せる
そしてふう、と嘆息を漏らした。

まただ。また花が手折られている。
茎の下の方から手折った跡がある。
最近誰かがガーベラを盗っていくようだ。
それも一輪。
一輪でもそれを繰り返されれば、いい気がしない。
妻への想いを手折られているような気にもなった。

手折った者が誰かは分からない。
一輪だからいいとでも思ったのか。
自然に生えているものだと思い違いでもしているのか。
塞いだ気分の儘、家の回りを一周し終えた。



そのうちに花を手折る者が誰なのか分かってきた。
近所の高校に通う男子生徒だ。
常に複数の生徒と共に訪れ、その男子生徒が花を選び一輪手折っていく。
男子二人、女子二、三人。
女子は顔触れが変わる事もあるが、男子は常に同じ人物だった。

いつも複数で来て、その男子生徒だけが花を手折っている。
女子も注意する訳でなく、一緒になって花を選んでいる。
そこに罪悪感はない。
漏れ聞こえてくる会話を聞けば、寧ろ誇らしげだった。

どうやら花を手折る男子生徒の恋人が入院しているらしい。
その恋人を元気付ける為に毎日見舞いに行き、その度に花を手折って持っていく。
そして女子生徒等は、彼の恋人への愛情の深さを賞賛していた。





[*前へ][次へ#]

2/81ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!