[携帯モード] [URL送信]

小説という名の日記B(栞機能無し)
1


津金泰造は鹿沼陽也に人生二度目の恋をした。

津金泰造、八十五歳。
大恋愛の末伴侶となった十歳年上の妻に、十年前に先立たれる。
それ以来妻の好きだったガーベラを植え、大切に育てる毎日を送っていた。

泰造の家は竹塀で囲まれている。
ガーベラはその竹塀の外側に、竹塀に沿って隙間なく植えてある。
そのガーベラが植えてある場所までが、津金家の敷地だった。



子供も疾うに自立している。
孫も疾うに成人式を終えて、曾孫までいる。
子供も孫も曾孫も遠くの地で暮らしており、連絡も滅多になく疎遠となっている。
妻が亡くなった時に、子供の顔を見たのが最後だ。
また家を訪ねて来る者もない。

妻に先立たれ独り身となった泰造は、妻の好きだったガーベラを妻を偲び育てていた。
ガーベラを育てる事が唯一の楽しみとなっていた。
それ故ガーベラが初めて花を咲かせた時は、喜びも一入だった。
色とりどりのガーベラは、泰造の余生をもささやかに彩っていた。



鹿沼陽也、十五歳。高校一年。
泰造は自分が彼に恋をするとは思ってもいなかった。
最初は単に、彼に好感を持ったのだと思った。
だが彼の事ばかりを考えては胸が高鳴っていく。

八十五歳の泰造と十五歳の陽也。
その差、七十歳。
だがこの感覚には覚えがあった。
まだ交際もしてなかった頃、妻に対し感じた感覚。
二十歳の頃の泰造が感じた恋と同じものだった。
そうして泰造は、自分の想いを自覚した。
















[次へ#]

1/81ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!