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小説という名の日記B(栞機能無し)
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母親の不倫相手の家族が訪ねてきた日から、父親は安定性を欠いた。
学校が休みになってから、柚季はずっと裕隆と過ごすようになった。
買い物も一緒に行った。
人通りを手を繋いで歩いた。
恥ずかしさもなかった。

柚季が風呂に入っている間にまた徘徊があった。
父親が寝ているのを見計らい入ったが、浴室から出た時はもうその姿はなかった。
幸い家を出た所で直ぐ見付けたが、それ以来風呂にも毎日一緒に入るようになった。

家でもずっと一緒に居た。
トイレも扉を開け放して父親の前で用を足した。
片時も目を離さなかった。



柚季が傍に居る限り、徘徊も部屋が荒れる事もなかった。
だが突如不安定になる時があった。

何の前触れもなく首を絞めてきた。
何故裏切った。
お前は誰を愛してる。

一度覚えた恐怖を何度も感じた。
その度に意識が途絶えた。
ぐったりすれば直ぐに手を離すのか、柚季の心臓が止まることはなかった。



昼夜を問わず抱かれ、倖乃、と名を呼ばれる。
酷く抱かれる時もあったし、優しく抱かれる時もあった。
酷く抱かれる度に問い詰められ、優しく抱かれる度に甘く愛を囁かれた。

柚季らキスを強請れば上機嫌になった。
柚季から抱いて欲しいとせがめば嬉々として飛びついてきた。
だがどんなに強請ってもどんなにせがんでも、何が刺激となるのか突如として豹変するようになった。



たった一度姿を現した不倫相手の娘がやってくることはあれからなかった。
だがそのたった一度が、父親を一気に不安定にしたのは確かだった。

柚季の姿がなければ、倖乃が出て行ったと思い込む。
倖乃と結婚してからの記憶はなくなった筈なのに、何かが父親を追い立てた。



もう直ぐ後期の夏期講習が始まる。
以前より状況が悪くなった。
父親から離れるのに今まで以上の不安を覚える。

だけど行けるなら行きたい。
学校に行って陽一に会いたい。
まだ柚季は陽一に謝ってない。
せめて謝りたいと思う。

膝に顔を埋める父親の頭をそっと撫でた。
















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