小説という名の日記B(栞機能無し)
25
君は・・・。
茫然と呟く声を聞き取った見知らぬ彼女が、次々に憎しみをぶつけていく。
「あんたの母親がお父さんを誑かした所為で、とうとうお母さんも死んだわ。どうしてくれるのよ」
あんたたちの所為よ。
お母さん、あんな事があっても頑張ってたのに。
思い詰めて疲れて倒れちゃって。
最期にあんたたちの事を言ってたわ。
あんたの父親があの女を追い詰めたから、他人の夫を騙くらかして心中なんかしたんだろうって。
あの女があの女ならあんたの父親も父親よ。
あんたたちの所為よ。
お母さんが死んだのもあんたたちの所為よ。
「勝手なこと言うな」
突然陽一が大声をあげた。
彼女を鋭い眼差しで睨み付けている。
「何が勝手よ。こいつの家族がお母さんまで殺したのよ」
「柚季も柚季の父親もお前ら家族と同じ立場だろ」
「ああ、そうだ。あんたんとこの父親、罪の意識に苛まれちゃってんじゃん。あんな・・・」
「だから勝手な事を言うなつってんだろ」
思わず陽一の腕を引っ張った。
「陽一、ちょっと待って」
「何が。あいつに言いたい放題言わせとく事なんかねえ」
「そうじゃなくて。ちょっと待って。その子に聞きたい事があるんだよ」
今にも殴り掛かろうとする陽一を必死で引き止めた。
「聞きたい事?」
「そう、どうしても聞いておきたい。だからお願いだから黙ってて」
分かったよ。
不機嫌な顔で漸く陽一が黙った。
渋々だが応じてくれた陽一に礼を言って彼女に向き合う。
「何よ。謝ったって絶対に許さないんだから」
彼女が憎しみの籠った目で睨み付けてきた。
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