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小説という名の日記B(栞機能無し)
18


「柚季」

声音の変わった陽一に、戸惑ったような視線が向かう。

「俺には何も言えない?俺はそんなに頼りない?それとも親友と思ってんのは俺だけかよ?」

何?いきなりどうしたんだよ。
明らかに柚季が困惑していた。
いきなり変わった話題にもその内容にも、訳が分からず困惑している。

陽一自身、いきなりだとは思った。
けれどもやんわりとした拒絶には、陽一自身をも拒絶されたような気がした。
ずっと考えていただけに、今まで一緒に居た時間を否定された気がした。



「柚季、その身体、まだ赤いのがあるよな」

昨日今日で消えるとは思えない。
首元に手を伸ばす。
覗き込めば矢張り赤は点在していた。

柚季が手を払い、笑顔を消して陽一を見た。
だから?だから何?
虫に刺されたって言ってんじゃん。

「何かの病気?」

威嚇する視線に動じず、陽一は最初の可能性を口にする。
え?柚季が瞬間固まった。

「そんなに赤くなんのって何かの病気じゃないの?」

「あ、病気、そっか、病気か・・・」

「その言い方、病気じゃないんだ?じゃあ病気じゃないなら何なんだよ?」



柚季の反応に確信した。
けれどももう一つの可能性は口に出さない。
それが誰にどんな理由で付けられたのか全く分からない。

押し黙った柚季に何を聞いても答えないだろう。
何もないならそれでいい。
何もないなら幾らでも黙っていたって構わない。
柚季に彼女がいたとして、陽一がその彼女の存在を知らないだけかもしれない。
だけど違うだろ。
その反応も陽一が気付けなかった今までのことも。
自分自身が悔しくなった。
陽一はたまらなくなって吐き捨てた。

「心配なんだよ」

詰まりは結局、その一言だった。





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