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小説という名の日記B(栞機能無し)
17


柚季が教室に駆け込んでくる。

「今日は間に合ったな」

「まあね、俺だってやる時はやるよ」

「やる時はつっても明日から夏休みだし」

「けど夏期講習がある」

「明日からも学校って、夏休みって感じしないよな」

確かに、と頷く柚季は何時もと変わらない。
違う、変わらないように見えるだけだ。
一晩考えて結論は其処へ辿り着いた。

なあ、俺はお前の親友だろ。
何でもいいから話せよ。
少しは俺を頼れよ。

変わらない笑顔に、そう言いたくなった。



終業式を終え教室に戻るとそれなりにざわついていた。
夏期講習はあれど、夏休みの開放感がないわけではない。
だが柚季を見ると開放感とは無縁の表情をしていた。

ぼんやりと自分の手元を眺めている。
周囲と話すでもない。
けれども担任の話を聞いてるようにも見えなかった。
心が何処か遠くへ行っていた。

考えすぎだろうか。
一度気になったら全てが気になってきた。
だから柚季の些細な表情を見て取ってしまうのだろうか。
親友だと思っていた柚季を遠く感じる。

少しでも頼れよ。
何でもいいから俺に吐き出せよ。
視線の合わない横顔に、陽一は小さく呟いた。



「柚季、帰ろう」

声を掛けると柚季が頷いて立ち上がる。
帰り道の話題は専ら課題の量だった。
その多さに二人で愚痴を零し合う。

「そうだ、俺ん家で一緒にやらないか」

断られると分かっていて陽一は聞いた。
駅まで迎えに行くからさ。
そうそう、苦手なやつは分担すればいいし。
二人で手分けすればその分早く終わるだろ。

自分でもむきになっていると分かっていた。
断られるのを承知で矢継ぎ早に話し掛けている。
柚季が困ったように苦笑するのにも気付いていた。

「態々手分けしなくても、今から地道にやっていけば終わると思うよ」

やんわりとした拒絶がたまらなくなった。





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あきゅろす。
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