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小説という名の日記B(栞機能無し)
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なかなか寝付けないのは、陽一自身その原因に気付いていた。

あれを見た時から気になりだした。
突然具合が悪くなったのも気になった。
今までも顔色が悪い時はあったが、単なる寝不足だと本人が笑って言うから、迂闊にもその言葉を鵜呑みにしていた。

遅刻や欠席は昔からあったが、今思えば昔より酷くなっている。
同じクラスに何度かなったが、その度に頻度が増していた。
朝が弱い。寝坊したからそのままサボった。
柚季の言葉を額面通りに受け取っていたが、それも違うような気がしてきた。



柚季はあれを虫刺されだと言っていた。
だがあんなに沢山刺されるものなのだろうか。
あんなに赤くなるものなのだろうか。
もしも暑い最中の長袖があれを隠す為のものだとしたら、あれは虫刺されなんかじゃない。

何かの病気の可能性もある。
だけどあともう一つの可能性。

まさかとは思う。
柚季に彼女がいるなんて聞いたことがない。
彼女の存在を隠しているのかもしれないが、あれだけの跡を付ける女を想像出来ない。



親友だと思っていた。
一番近い位置にいると思っていた。

けれども何かがしっくりこない。
隠し事をされている気がする。
だからなのか陽一は柚季の家を知らない。
陽一が引っ越してからは、陽一の家にも来なくなった。
思い当たればもうだいぶ昔から、疑ってしまえば小学校の時からだ。
隠し事と言うよりは、頼る事をしない。



あれは小五の時だった。
ちょっとした話題になった事件があった。
柚季の母親が男と二人で心中をした。

あの時柚季はどうしてたか。
そうだ、何も言わなかった。
一時広まった噂にも何も言わなかった。
陽一に対しても何も言わなかった。
何も言わずずっと口を噤んでいた。

そしていつしか噂は忘れられた。
柚季の態度も変わらなかった。
だから陽一も過去の出来事だと思っていた。

けれどもよく考えればあの頃からじゃないだろうか。
遅刻するようになったのも。
欠席するようになったのも。

何かが結び付きそうで結局は結び付かない。
考えれば考えるほど、陽一は柚季の事が気に懸かった。
















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