[携帯モード] [URL送信]

小説という名の日記B(栞機能無し)
15


泳ぐ視線に、その後に繋がる言葉が予想出来た。
だから、何?と素知らぬ振りで返した。

「赤いのがあったけどそれって・・・」

「虫刺されだよ。薬塗ったから痒みはないけどね」

上から言葉を被せれば、そうなんだ、と複雑そうに頷く。
けれども納得してないのは、何か言いたげな視線で分かった。

何を言われようと、これ以上話すつもりはない。
だから話を打ち切るように、早く行こう、と声を掛けた。
それでも複雑そうにしていたが、結局陽一はそれ以上何も言わなかった。



不意に吐き気が襲ってきた。
緊張と暑さと疲労が一気に襲ってきた。
慌てて口を押さえた柚季に気付いて、陽一が駆け寄ってくる。

「おい、大丈夫か」

口を押さえたまま何とかそれに頷いた。

「トイレに行こう」

だけど返事が出来ない。
それを見て取ると、柚季の身体を支えながらトイレに連れて行ってくれた。



トイレで吐いた柚季を心配そうに見詰める陽一に、何とか笑顔を向ける。

「ごめん、保健室に行くって言っといてくんない?」

疾くに授業が始まっている。
この調子では体育は無理だ。
陽一が付き添うと言ってくれたけど、それを断って歩き出した。

だが断ったにも拘わらず、陽一は保健室まで付き添った。
無理するなと一言だけ告げ、柚季の身体を支えていた。



保健室で休んでだいぶ楽になった。
授業が終わると同時に、陽一が制服を持ってきてくれた。

放課後も家まで送ると言われたが、絶対に首を縦に振らなかった。

「なあ、本当に一人で大丈夫かよ」

「楽になったし大丈夫。心配掛けてごめん」

電車が陽一の降りる駅に到着する。
扉が開いて、そのまま陽一の身体をホームに押し出した。

「今日はありがとう」

手を振ると同時に扉が閉まる。
動き出した電車の中で、柚季は何とか立っていた。















[*前へ][次へ#]

15/51ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!