小説という名の日記B(栞機能無し)
14
この時期の長袖は暑い。
一年間長袖で過ごすのは、柚季の他にもちらほら居る。
けれども大抵が半袖だった。
裕隆に付けられた跡が散らばっているから、暑くても毎年半袖になれない。
仕方がないし諦めてもいるが、暑いのだけは身体に堪える。
特に無理を強いられた翌日は、暑さによる汗と冷や汗の両方が流れた。
体育がある日は特に辛い。
保健室に行こうかと思ったが、せっかく学校に来たのだからと、陽一と一緒に更衣室に向かった。
「昨日も寝坊したからそのままサボったってのかよ」
「まあね、俺、朝弱いし。意志薄弱だし」
「何でそんなにあっさり言うかなぁ」
「意志が弱いのって自慢になんない?」
「ばーか。なんねぇよ」
着いた更衣室で、いつものように肌を隠しながら体操服に着替えていく。
「いつも思うんだけどさ」
「何?」
「体育も長袖って暑くないか?しかも上下」
陽一の疑問は尤もで、時折繰り返される会話となっていた。
そしてそれに対する返事も決まっている。
「別に暑くはないよ」
「んな訳ないだろ?こんなに汗かいてんじゃん」
あっさりと返せば、陽一の手が顎の下に伸びてきた。
擽られそうな予感に身体を捻る。
だがそれがまずかった。
ヤバいと思った時には、既に陽一の指が首元に引っ掛かっていた。
直ぐにその指を退けたが、それはもう遅かった。
陽一が大きく目を見開いた後、言い難そうに口籠る。
「なんか今・・・」
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