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小説という名の日記B(栞機能無し)
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父を連れて帰っていいですか。
警官に問う。
少しだけいいかな、と引き止める声に頷いた。

道端で蹲っていたんだよ。
何を聞いてもあの様子で、取り敢えず保護したんだけど。
君のお父さんは精神面に不自然なところはないかい?

言葉を選びながら話し掛けるそれに、柚季は首を振って答える。
ちょっと疲れてるだけなんです。
何処もおかしくないですから。
それよりも早く連れて帰りたいんですけど。

話がそれならこれ以上此処に留まる必要はない。
きっぱりと否定し拒絶した。

帰ろう?
父親の手を取りそっと引っ張れば、裕隆が素直に立ち上がる。
有難うございました。
礼を述べ交番を後にした。



夜御飯は何が食べたい?
偶には出前でも取る?
帰り道、裕隆に話し掛けても答えがなかった。
ただ引っ張られるままに柚季の後を付いて行く。

沈黙が重かった。
けれども見付かって良かった。
この手の温もりが父親の存在を教えてくれる。
無事だったのだと教えてくれる。

裕隆を探す度に感じる恐怖と後悔。
矢張り一人にはしておけないのだろうか。
学校を辞めてずっと父親の傍に居た方がいいのだろうか。
もう直ぐ夏休みが始まる。
夏期講習はあるが、それでも平常の授業よりは早い時間に終わる。
その間に少しはどうにかなるだろうか。



「父さん、着いたよ」

家の玄関を開けて父親を中に入れる。
靴を履いたまま突っ立っていたから、廊下に座らせて靴を脱がせた。
自ら動こうとしない父親の手を引き、リビングへ連れて行こうとした途端、強い力で引っ張られた。
無理矢理引き摺るように引っ張る父親は、奥の部屋を目指していた。





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