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小説という名の日記B(栞機能無し)
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裕隆は亡き妻倖乃を愛していたが、倖乃はそうではなかった。
当時倖乃には好きな男性が居て、その人は別の女性と付き合っていた。
そんな状況の中、知り合いから紹介された裕隆と付き合い柚季を身籠る。
倖乃をユキとも呼び、裕隆は倖乃を大事にしていた。
幸せな家庭を築いていく筈だった。

倖乃が好きな男性に再会したのは、柚季が誕生してから五年が経っていた。
その男性も倖乃に惹かれ、軈て二人は愛し合うようになる。
所謂不倫だった。
互いに真剣だったらしい。
裕隆の留守を狙い、その男性は家にもやってくるようになった。

だがどんなに二人が注意を払っても、何時までも蜜月が続く筈がない。
柚季が小学四年になった時に裕隆に二人の関係がバレた。
泣く泣く別れた二人は、その後も密かに連絡を取り合う。
追い詰められた二人が心中をしたのは、その一年後だった。



裕隆に違和感を感じ始めたのは、それから半年くらいしてからだった。
本当は倖乃が亡くなった直後からその兆候があったのかもしれない。
だが父親に全幅の信頼を寄せていた柚季は、妻を亡くした父親が悲嘆にくれているのだとばかり思っていた。

ある日柚季が学校から帰ると、父親が凄い勢いで駆け寄ってきた。
そして柚季を強く抱き締めて、安心した声で言った。
ユキ、心配したんだぞ。
何処に行ってたんだ。

それが最初の違和感だった。



それからは違和感ではなくなっていった。
柚季にもはっきりと分かった。
父親が柚季を母親だと思い込んでいる。

最初のうちは時々だったそれも、日を追う毎にどんどん酷くなっていった。
今でも柚季を柚季と認める時もある。
だがその頻度は確実に少なくなった。
柚季が学校に行っている間に、倖乃を探して徘徊することもある。
真夜中公園のベンチに座り込む裕隆を見付け、連れ帰った事もあった。
そんな父親が仕事に通える訳もない。
裕隆は会社を辞め無職となった。
当時貯金があったから、どうにかこうにか今までやってこれた。
柚季の毎日は裕隆を中心に回るようになった。















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あきゅろす。
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