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小説という名の日記B(栞機能無し)
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「柚季、帰ろうぜ」

「うん、帰ろう」

若槻陽一の声に根本柚季が立ち上がった。
柚季と陽一は小学三年で知り合い、それ以来友好を深めている。
小学、中学、高校と同じ学校だったから、この八年間違うクラスだった事も多々ある。
それでも二人は仲が良かったし、同じクラスとなった高校一年の今も大抵一緒に帰っていた。

同じ方向に帰るから同じ電車に乗る。
降りる駅は一駅違いで、先に降りるのは陽一だった。



「偶には家に来ればいいのに」

中学になって引っ越した陽一の家は駅の近くにあるが、柚季は一度も遊びに行った事がない。
小学校の頃に住んでいた家にはよく遊びに行っていた。
だが小学五年くらいから少しずつ誘いを断るようになり、陽一が引っ越してからは毎回断っていた。

未だに誘い続けてくれるのは嬉しいが、矢張り柚季はそれを断った。

「遠慮しとくよ。家が一番安心するから早く帰りたいんだ」



ホント、すっかり出不精になったな。
鋭い突っ込みに苦笑が零れる。

「じゃあ俺が遊びに行くよ」

最初は慣れなかったその言葉も、今ではすらすら答えられるようになった。

「俺ん家来ても入れてやらないし」

「つーかその前に何処にあるか分かんねえし」

知り合った当時、子供ながらに家に友達を連れて行くのはまずいと感じていた。
あの頃と状況は違うが、今も連れて行けるような状況ではない。



「まあ、散らかってるから、誰であっても家に入れたくないんだよ」

「俺ん家だって散らかってるし」

「だけど女が居ると居ないじゃやっぱり散らかり方が違うよ」

「その前からだったろ」

陽一と知り合った頃は、柚季の母親はまだ健在だった。
母親が亡くなった時、ちょっとした話題になったが、今では噂にも上らない。
柚季が話そうとしなかったから、陽一も当時の事情を詳しく知らない。
そして今もこうして話題に出すくらいには過去の出来事となっていた。



陽一の降りる駅に到着する。

「また明日」

「じゃあな」

柚季はにこやかに手を振って陽一を見送った。















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あきゅろす。
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