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小説という名の日記B(栞機能無し)
4


美圃が怒った理由が分からないまま日にちが過ぎた。
理由を聞いても教えてくれないと園香が言う。
大嫌いと宣言されれば流石に話し掛け辛く、仕事中も今まで以上に会話がなくなった。

そんな折、訃報が届いた。
美圃の夫が亡くなったという。
結婚していたとは知らなかった。

同じ職場の身内の通夜。
職場の人間は皆通夜に行くらしい。
残業を済ませてから行くという者もいた。
嫌われているとは言え、怜生も同じ職場の人間。
仕事が終わり次第、通夜に行く事にした。



美圃は気丈にも涙を見せなかった。
訪れる人達に静かに頭を下げていた。
けれども怜生を見た時、彼女の表情が険しくなった。
こんな時まで嫌悪感を露わにするほど、怜生の何が彼女を怒らせたのだろうか。

「この度は・・・」

ぎこちなく頭を下げる怜生を睨み付けてから、美圃も頭を下げた。

「美圃、この方は?」

彼女の露骨な態度が気になったらしい。
隣にいた女性が美圃に声を掛ける。

「知らないわよ」



流石にそれはないんじゃないかと思った。
だが次々に弔問客が訪れる中、声を荒げる事も出来ずにぐっと言葉を押し込める。
そして自ら名を名乗った。

「あら、あなたが・・・」

「お姉ちゃん」

女性の言葉を遮って美圃がまた睨み付けてくる。
気まずい空気のまま焼香を済ませた。



焼香が終わり帰ろうとした怜生を呼び止める声がした。
振り向くと其処には先程の女性がいた。

お姉ちゃんと呼ばれていたから、美圃の姉なのだろう。
怜生と同じ同性愛者というのがこの女性なのだろうか。
だがそれを聞く訳にはいかない。
それよりも何故この女性に呼び止められたのかが分からなかった。

「ちょっと時間を頂けない?」

怜生が頷くと女性は奥まった場所に向かう。
振り向いて彼女は言った。

「妹が失礼な態度を取ったことを謝りたくて」

美圃の怜生への態度を申し訳なく思い、謝罪の為に呼び止めたのだと知った。





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