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小説という名の日記B(栞機能無し)
3


「あいつの親は孫の顔を見たがってるんですよ。それをあいつも分かってるんです。そりゃあ俺が産めるなら幾らでも産みますけどね。だけど俺は男だから子供を産んでもあげられないんです。家族にはなれないんです」

美圃の方が先輩になるため敬語は崩さない。
だが同性愛を否定されなかった安堵から、思っていた事がぽろぽろと零れてきた。

「まだその人のことが好きなんだって。ね?須々木さんって一途でしょ?」

園香が美圃に同意を求める。
その明るい声を聞いて美圃が口を開いた。

「馬鹿みたい」



一瞬場の空気が固まった。
心底冷たい口調だった。
美圃の視線に明らかな悪意を感じる。

怜生も園香も互いに顔を見合わせた。
互いの顔がぎこちなく強張っていた。
場を繕おうと園香が口を開いた途端、それに被せて美圃がまた言い放つ。

「私、あんたみたいなの大嫌い」



それは確かに怜生に向けられていた。
突然の出来事に訳が分からず苦笑いを浮かべる。

「えと、久光さん?俺、何か怒らすようなこと言いました?」

笑顔を無理矢理張り付けてみたが、彼女の態度は変わらなかった。
それどころか食べかけの食事を残して席を立つ。

「園香ちゃん、気分悪いから先に行っとくわね。園香ちゃんはゆっくり食べてくるといいわ」

「え?美圃さん、どうしたの。ちょっと・・・」

園香の引き留める声に構わず、美圃が食堂を出て行った。



後に残ったのは重苦しい空気。
気まずげに園香が口を開く。

「須々木さん、ごめんね。美圃さん、どうしちゃったんだろ。あんなに怒ったの初めて見たんだけど、何処にも怒る要素なかったよね」

そう言われても怜生にもさっぱり分からない。
ただ可能性があるとすれば。

「やっぱり偏見があったとか」

「それはないわよ。美圃さんのお姉さんも同性愛者だって言ってたから」

そういう事実を本人の許可なく言っていいものかと思ったが、怜生だから話したのだと言われれば咎めることも出来なくなった。
互いに首を捻ったが結局理由は分からなかった。















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