小説という名の日記B(栞機能無し)
2
あいつにバレた。
あいつは笑った。
諦めたように笑った。
そしてたった一言言った。
やっぱり信じなくて良かった。
この一言で過ちを犯したのだと気付いた。
ごめんと謝った。
許してくれと訴えた。
だけどあいつは不思議そうな顔をしていた。
なんで謝るの?
別にいいじゃない。
それでいいじゃない。
あいつの中で何かが変わっていた。
あいつは諦めたような表情を浮かべなくなった。
にこやかな微笑みを浮かべるようになった。
体を望めば拒まない。
素直に応じる。
だけどあいつは希望を言わない。
ただ求めに応じるだけ。
浮気にも愛にも触れない。
恋人なのに恋人じゃない。
家族でもないのに、求めれば拒まない家族のような。
一生傍にいてもいいか。
不安になって問う。
好きにしたらいいよ。
にこやかな笑顔であいつが答える。
あいつは拒まなくなった。
あいつは望まなくなった。
あいつを大切にしたいと思っていた。
思っていたのに、目の前で笑うあいつは脱け殻のようだった。
あいつの笑顔が心臓を締め付けた。
どうしようもなくて苦しくて。
にこやかに笑うあいつをただ抱き締めるしかなかった。
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