小説という名の日記B(栞機能無し)
2
何故?どうして?
信じられなくて茫然と呟く。
浮気相手は僕と同じ立場だったじゃないか。
僕の方が長く付き合ってる分、僕を大切にしてくれてたじゃないか。
彼が好きになった相手が浮気相手だということが信じられずにいた。
あいつに絆された。
何故?と問う僕に彼は言った。
一生懸命な姿に惹かれた。
本当に俺を好きなんだって分かった。
あいつが言うんだ。
あいつだけを好きになってくれ。
他の誰かじゃなくあいつだけを見てくれ。
俺を好きだって一生懸命言ってくるんだ。
凄く一生懸命なんだ。
それであいつと過ごすうちに、段々あいつが可愛く見えてきた。
あいつが真剣だから俺も真剣になろうと思った。
何それ。僕は呟く。
僕だって真剣だった。
彼のことが本気で好きだった。
今だって大好きで、彼の言葉にこんなにショックを受けている。
今日だって会えるのが楽しみで嬉しくて、まさか別れを告げられるとは思ってもいなかった。
ごめんな。彼が再び頭を下げる。
すっきりした顔。
彼が僕との関係を完全に終わらせている。
だけど僕はそんなに簡単に終われる筈がない。
ずっと好きだったんだ。
今でも好きだ。
なのに「嫌だ」の一言が出て来ない。
嫌だと言いたいのに。
別れたくないと縋り付きたいのに。
僕の口は麻痺したかのように動いてくれない。
彼が去っていく。
僕の前から去っていく。
そして僕の視界から彼が消えた。
恋愛小説のハッピーエンド。
主人公が必ず幸せを掴む物語。
だけどハッピーエンドは僕に訪れなかった。
涙も拭わず泣いた。
泣きながら物語を読んだ。
あれほど幸せな気持ちになれたのに、物語が終わるに連れ、僕の目にはまた涙が溢れ出した。
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