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小説という名の日記B(栞機能無し)
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彼は僕の他にもう一人付き合ってる人がいる。
俗に言う二股だ。
何方が浮気相手になるのか。
僕の方が本命だとは思っている。
そう思っているのだから堂々と彼を詰ればいい。
浮気を怒ればいい。

だけど僕は言葉を呑み込んでしまう。
何も言えなくなる。

彼と浮気相手が一緒に居るところを見たくなくて僕は顔を背けた。
見たくないから見ない。



僕は恋愛小説の世界に逃げ込んだ。
どんなことがあっても必ずハッピーエンド。
小説を読むのは楽しかった。
小説を読んでる間は嫌なことを忘れられる。
ハッピーエンドだから安心して読めた。
そうして僕は恋愛小説の世界に耽った

そうなると彼と会う時間が減っていった。
今まで僕から彼に連絡する方が多かった。
彼からも勿論連絡は来た。
それでも圧倒的に僕からの方が多かった。

恋愛小説にのめり込めばのめり込むだけ、彼との時間が減っていった。
だけどその間は、見たくないものを見なくて済んだ。



突然彼から連絡があった。
今から会えないか。
僕を誘うということは、今日は浮気相手が彼の傍にいない。
二つ返事で了承した。

久し振りに彼に会えるのが嬉しかった。
彼と話せるのが楽しみだった。
僕は待ち合わせの場所に急いで向かった。

彼は僕より少しだけ遅れてきた。
久し振りに見た彼。
ああ、やっぱり僕は彼が好きなんだ。
彼の姿を見てしみじみ思う。
嬉しくて幸せで、つい顔が綻んだ。
浮かれていた僕を突き落としたのは、彼の意思を持った一言だった。

別れよう。いや、別れてくれ。



頭が真っ白になった。
どうして?
僕の声は掠れていた。
みっともなく震えていた。
嫌だ、別れたくない。
声は声にならなかった。

彼が僕に頭を下げる。
幸せにしたい奴が出来たんだ。
彼がはっきりと語った。

僕は震える声でその名を問う。
彼が幸せにしたいと言った相手が誰なのか知りたかった。
彼が好きになった相手を知りたかった。

彼がその名を告げる。
大切そうにその名を口にした。
彼が口にした名前。
それは彼の浮気相手だった。





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あきゅろす。
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