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小説という名の日記B(栞機能無し)
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アルの呟きに声が答える。

アル、本当のことを教えてあげる。
本当はね、本当は何もないんだ。
緑もない。鳥もいない。
何もないんだよ。
外は荒れ果てた大地。
あるのは瓦礫の山。
だから今までアルが見てきた外の世界は偽物なんだ。
勿論僕も死んでいる。
脳だけをプログラムに繋げて生かしてあるんだ。
だから外の世界もこの僕も、全部虚像なんだよ。

嘘だ。アルは咄嗟に叫んだ。
なのにユタの声が嘘じゃないと言う。
外を見てきてご覧。
いつもの優しい声音でアルを促す。
アルは走って外へ飛び出した。



本当に何もない。
本当に何もなかった。
洞窟の外。

さっきまで森だったところは焦げた大地。
散乱した瓦礫。
あちこちに転がる石塊。
何かの衝撃で削り取られた地面。

切り立った崖もない。
洞窟だった場所は廃墟と化した建物。
目覚める前の文明が建てたもの。
面影もなく崩れているが昔ビルだったもの。

楽園は本当に何処にもなく、荒れ果てた世界になっていた。



アルは茫然とした。
訳が分からなかった。
何が何だか意味が分からない。
何をどうしたらこうなったんだろう。
茫然とアルは洞窟ではなくなった廃墟に戻る。

ユタの眠る場所。
そこも何故かさっきよりも薄暗い。
少しずつ暗くなっていっている。

ユタの身体が変化している。
色艶のよかった肌が褐色になっている。
変化は止まらない。
今も身体が朽ちていっている。

ユタの身体だけでなく、全てが変化していっている。
ただ一つ変わらないのはユタの眠る装置。
ユタの身体の入っている機械だけが、今も微かな音を立て変わらず起動している。





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