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小説という名の日記B(栞機能無し)
3


あーあ、とうとう来ちゃったね。
何処からか聞こえてきた声。

カプセルの中の眠ったままの身体。
目を閉じていて口元も動いていない。
それは死んでいるようで。
けれど生きてるように肌艶がいい。
その身体から、正確に言えばその身体が寝ている装置の上部から聞こえてきた声。

だけどその声もその顔も見覚えがある。
アルはこの人物をよく知っている。
何故ならば、これはアルの友達、ユタだから。



だけどユタは外に居る筈。
アルを探してくれている筈。
だったら、これは誰?

誰なんてアル自身が知っている。
これが誰か、アル自身がよく分かっている。

これはユタ。
紛れもなくユタ。
ユタ以外の何者でもない。

何でユタが?
ユタは朝、アルと一緒だった。
小鳥の囀りを聞いてくると言ってアルが出掛けるまでは、ずっとアルはユタと一緒だった。
気を付けて行っておいで。
そう言って、ユタはアルを送り出してくれた。

なのに此処にある身体は?
死んだように眠る身体は?
いや、実際死んでいるのかもしれない。
身体がピクリとも動かない。

これはユタ?
本当にユタ?

繰り返してみるけれど、アルはこれがユタだと知っている。
間違いなくユタ本人だと分かっている。
何故ならばその声もその顔も、全てユタのものだから。

アルの口から茫然とユタの名が零れ落ちた。



そう、僕が本物だよ。
また声が響いてきた。

ユタの声。
此処に眠る身体が、本物のユタだと告げている。

それならば、外に居る筈のユタは?
あれは誰なのだろう。
あれは本物のユタじゃない?
あれは偽物?

まさかそんな筈はない。
だってアルはユタと過ごしてきた。
毎日毎日過ごしてきた。
目覚めた時からこの世界には、ユタとアルしか居なかった。
ユタとアルはこの楽園のような世界で毎日を過ごしてきた。





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