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小説という名の日記B(栞機能無し)
14

外は雨が降っている。
土砂降りの雨。
なのにその男は傘をさしてない。
合羽を着ている訳でもない。
至って何処にでもあるような洋服。

それなのに服が濡れてない。
服だけではない。
男自身が濡れてない。
土砂降りの中に立っているのに、全く濡れていない。

何だ?あれは何だ?
一体、誰だ?



何が何だか分からない。
あの男は確かに変だ。
何故雨に濡れないで立っていられる。
あの男は危険だ。

咄嗟に映希を背中に隠す。

「何だよ、お前は」

俺の睨みにも動じずに、男は穏やかそうな得体の知れない笑みを浮かべている。
俺の存在を無視して、視線を俺の後ろへと向けている。

「映希、迎えに来たよ。漸く母さんと仲直り出来たんだ。向こうで母さんが待ってるよ」



何を言ってるんだ、この男は?
迎えに来た?映希を?
向こうで誰が待ってるって?

何が何だか分からない。
だけどこのままだと映希が連れ去られる。
映希が消えてしまう。

「映希は彼と付き合ってるのかな?」

不意に男が俺をちらりと見遣った。

「うん、付き合ってる」

「だったらどうするのかな?まだ此処にいる?それとも一緒に行くかい?」



何を言ってるんだ。
行かせない。行かせるもんか。
映希だって俺と居たいと思ってくれてる。
ずっと一緒に居たんだ。
映希のことだけ考えてきたんだ。
行かせてなんかやるもんか。

それなのに映希は。

「一緒に行く。父さんと行くよ」

「彼はいいのかい?」

「うん、だって俺の言った事、信じてくれない。今も雨の中に連れて行こうとしてた。どっちにしろ俺の身体、溶けるんだよ?だから父さんと一緒に行くよ」





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