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小説という名の日記B(栞機能無し)
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「雨が降ったら触れないんだから、晴れてる時くらい抱いたっていいじゃないか」

「雨が降ってても風呂に入れば抱いていいって言ってるじゃん」

「風呂に入る間に萎えるんだよ」

「そんなこと言われたって・・・」

こんな不毛な会話がしょっちゅうある。
苛ついてるから普段言わないような事まで言ってしまう。
けれども最後に映希が俯いて黙り込むから、そこで俺は何とか落ち着きを取り戻す。

映希は病気なんだ。
仕方のない事なんだ。
俺がしっかりしないでどうする。

気を取り直して別の話題を振ってその場を取り繕う。
そんな小さな諍いがしょっちゅう起こるようになった。



映希の為にという思いが映希に伝わらない。
それが苛々を鬱積していく。

今日も雨が降っている。
土砂降り状態。見事な雨。
幾ら傘をさしても映希の家に着いた時には、当然俺の服も俺自身も濡れていた。

今日、学校が休みで良かった。
またもや断られて映希の家から学校に一人で行かなくて済む。

映画にでも誘ってみようか。
いつものように計画を立てるが、晴れの日しか実行された事がない。
今日もまた映希に断られるのだろう。



夕方来ると言っていたのに昼間来たから、映希はまだ風呂の用意をしてなかった。
玄関先で何枚ものタオルを渡され、濡れた服や顔などを拭いていく。
手をしっかり拭いて、タオルを乾いたタオルで包んで返した。
これが雨の日の日常。
それでも映希は俺に触ろうとしない。
リビングに入れた後、急いで風呂の用意をしに行こうとする。

「映希、待って」

風呂に入りたい訳じゃない。
今日こそ一緒に映画でも見に行けたなら。
映希が振り返って不思議そうに俺を見る。





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あきゅろす。
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