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小説という名の日記B(栞機能無し)
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映希は儚なげで脆い。
だから支えてやりたいと思った。

映希は水を嫌っていた。
雨も嫌っていた。
雨の日は絶対に出掛けなかった。
雨が降るかもしれない日も出掛けなかった。

映希によれば、水に濡れると身体が溶けるらしい。
頑なにそう思い込んでいる。

何故そう思うようになったかは分からない。
だが過去に何かあったのだろう。
映希の心を壊してしまうような何か。
映希のそれは明らかに妄想と思われた。

脆くて弱い映希の心を癒やしてやりたい。
傍で支えてやりたい。
それが映希への恋愛感情を抱くきっかけだった。



俺は映希に告白した。
消極的な映希に、それでも付き合ってくれと押して押しまくった。
だから映希が付き合いを承諾した時は、本当に嬉しかった。

映希を支えていこう。
少しでも力になろう。

俺にはそういった症状の知識がない。
だが焦らずゆっくりいかなければならない。
傍で支えていればいつかは治る。
それが俺の考えだった。



だから俺は焦らなかった。
少しでも多く映希の傍で過ごした。

一緒に居ればそれだけ触れ合う時間が多くなる。
キスもするようになった。
それ以上の行為もするようになった。

映希に信頼されている。
それは俺の自惚れではない筈。
時々甘えてくるのが可愛い。
帰る時に悲しそうにされれば、言葉に出さなくても淋しさが伝わってくる。
甘え下手だからこそ、尚一層愛しくなる。



映希は一人暮らしだった。
何の気兼ねも要らない。
だから俺はしょっちゅう映希の家に行く。
映希の傍に少しでも居てやりたくて、暇を見つけては映希に会いに行く。

初めて映希の家に行った日に一人暮らしだと知った。
父親も母親も亡くなったと言う。
何だか理由を聞くのも憚られて、俺はついごめんと謝った。

「逸成が謝る必要ないのに」

俺を気遣ってか、その後直ぐに映希からキスをしてきた。





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