それでもこの世界よりマシだと思う。
自分と同じ顔をした存在に、愛おしげな眼差しを向ける昴を見ているよりはマシ。
恒矢の知っている世界ではないこの世界よりはマシ。
昴が居ない世界の方がまだマシだと思った。
何処でもいいから帰りたい。
居場所はないけれど、帰るとしたら日本しかない。
きっと居場所がなくてもどうにかなる。
きっとどうにでもなる。
日本に戻ったら何をしよう。
先ずはこの世界に行き来できる祠を壊そう。
二度と昴に会えなくなるように。
会いたいと思っても会えないように。
この通路を直ぐに壊そう。
自分が一番負け犬だと思う。
だけど負け犬でもいいと恒矢は嘲笑う。
自分自身を嘲笑う。
馬鹿馬鹿しい。
自分自身が一番馬鹿馬鹿しい。
けれどそれももうお終い。
さあ日本に帰ろう。
鳥の羽音が聞こえてくる。
それを合図に、恒矢は祠へ飛び込んだ。