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小説という名の日記B(栞機能無し)
21

これが条件だ。
さあ、どうする?
晶太に答えを要求する。

これだけ揃った好条件。
急展開に付いていけずに、晶太があんぐりと口をあけている。

さっさと決断しろ。
苛ついた口調で迫れば、晶太が慌てて何度も頷いている。
そんなことでいいの?
本当にそれでいいの?
頷きながらも繰り返す問いを、恒矢は無視して扉を開ける。

「これが鍵だ。話し合った結果、地球に送ったと言って、この鍵を国王に返せ」

晶太へと放り投げれば、慌てて鍵を受け取っていた。



俺に付いて来い。
但しお前と馴れ合うつもりはない。
だから一切俺に話し掛けるな。

恒矢のきつい口調が晶太を萎縮させる。
だが恒矢に付いて行かなければならない。
慌てて晶太は恒矢の後を追いかける。

早足で恒矢が歩いていく。
何処に向かっているのか分からない。
ずっと城の中で暮らしてきたが、幽閉されるまで晶太は地下の存在を知らなかった。

恒矢が今向かっている場所も、晶太には検討がつかない。
裏にある森林。
その中に建てられた小さな祠。
こんな祠があるなんて、晶太は全く知らなかった。



「此処が表の地球と裏の地球を繋ぐ場所だ。お前は場所だけ覚えればいい」

だからもう戻れ。
昴に会いに行ってこい。

これ以上晶太と顔をつき合わせるのはうんざりだった。
見送りをしてほしいとも思わないし、晶太も見送りたいと思わないだろう。
昴に愛されている存在が、疎ましく妬ましい。

さっさと晶太を追い払えば、晶太は振り返らずに昴のもとへ駆けていった。



恒矢は小さな祠を眺める。
日本なら山や寺などあちこちにありそうなもの。
けれども城には似付かわしくない。
この城には異質な建物。

この場所を抜ければ日本。
恒矢の育った世界。

けれども恒矢の住んでいたのは、どうやって手に入れたんだか分からない古ぼけた小さな一軒家。
この世界に来る際に、千宙が手放したと言っていた。

更には金もない。
替えの服もない。
着の身着のまま。

親しい友もいない。
日本に恒矢の居場所はない。




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あきゅろす。
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