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小説という名の日記B(栞機能無し)
19

外に出ることが叶わぬ以外、何不自由のない地下牢。
昴から差し入れられた本を読む。

もう勉強は必要ないだろうに、何故か昴が持ってきた。
勉強する意味が分からなくて何故?と問えば、見返したいから、と答えが返ってきた。

勉強をすると昴が喜んでくれる。
きっと晶太の事で、恒矢に馬鹿にされたのだろう。
昴が居てくれるだけでいいと晶太は思う。
昴が馬鹿にされずに済むように、晶太は一人でいる時に本を読むようになった。



けれども本当は勉強よりも、昴の結婚の日にちの方が気になる。
だがそれが何時なのかは、昴も分からないらしい。
恒矢との間に会話がないと言う。

自分からは話し掛け辛い。
だから昴自身の事なのに、昴も自分の婚礼の日を知らない。

婚礼の日にちが気懸かりではあるけれど、昴と恒矢の間に会話がないことは嬉しかった。



恒矢は鍵の在処をだいぶ前に把握していた。
国王自らがその鍵を持っていた。
夕食の席、人も出払った瞬間を見計らい、国王に話し掛ける。

「地下牢の鍵を下さい」

訝しげな国王に、一度晶太と話をしたいと申し出た。
婚礼を控えた今の時期だからこそ、自分を見つめ直す為にも会って話をしてみたい。



国王は何やら考え込んでいた。
国王は恒矢が晶太と会った事があるのを知らない。
その存在だけは教えていたが、実際に会わせた事がない。

自らを振り返るため。
そう言われれば、それもそうかと納得する部分がある。
何よりも、国王は血の繋がった息子に甘かった。

暇な時にでも会いに行ってみるがよい。
考えた末に、国王は恒矢に地下牢の鍵を手渡した。



恒矢は地下牢の鍵を持っている。
世継ぎの子が今にも産まれそうだとの報告を、今受けたばかりだ。

いざ産まれてみるまでは分からない。
死産でなければ、それでいい。
大切に育てるように、皆の者に言い渡してある。

鍵を眺める恒矢のもとへ、朗報が届いた。

「今お世継ぎが誕生されました。五体満足の健康な男の子です」




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あきゅろす。
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