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小説という名の日記B(栞機能無し)
17

「そうだな、俺は昴を愛してる。だから結婚を取り止めない。だけど昴はあいつと好きにいちゃつけばいい」

もし万が一、俺の身に何かあればあいつがまた王子になる。
あいつは俺の影武者。
影武者のあいつに、それくらいの褒美は与えてやらないとな。



恒矢の身代わりに過ぎないと皮肉れば、昴の瞳に嫌悪が滲む。
けれど恒矢は喋るのを止めない。
此処で止めれば、昴の中で今のこの会話が嫌悪だけで終わってしまう。
このまま続けても残るものは嫌悪だけかもしれないが、言わないよりはマシだ。

「昴、お前は誰に仕えてる?」

「・・・王子です」

「誰を支えていかねばならない?」

「・・・王子です」



昴から悔しさが滲み出ている。
それはきっと晶太を見捨て、恒矢に仕える悔しさ。

恒矢は昴の父、千宙から教育を受けてきた。
恒矢の教育に力を注ぎ、滅多に会わない息子の教育には失敗したのか。
それとも色恋で昴自身が見失ってるだけか。

千宙の恒矢への教育。
今から言う言葉は、千宙の教育で培ってきたものだ。



今は俺が王子だ。
だけどまたあいつが王子にならないとも限らない。
それなのにあいつは何だ?

お前のそれは、支えてるんじゃなくて、あいつを甘やかしてるだけだ。
お前は地下に閉じ込められたあいつを慰めて、不幸だと嘆いて、それでお終いだ。
一体何をしにあいつに会いに行っている。

影武者とは言え、王子になる可能性のある奴だぞ。
何故地下に居るあいつに勉強をさせない?
この世界の王位継承者になる可能性への自覚を再び持たせない?
それが出来るのは昴、お前だけなんだぞ。

お前は王子に仕え、王子を支える身なんだ。
いつまでも悲劇の主人公気取りでいるな。




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あきゅろす。
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