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小説という名の日記B(栞機能無し)
15

「ふうん、両想いってことか。けど結婚は取り消さないから」

告げられた声に、二人の顔が強張った。
恒矢は取り消すつもりはない。
何と言われようがこれは決定事項。
非難する視線を受け、恒矢は真っ向から言ってのける。

「取り消さないじゃなくて取り消せない。世継ぎまで作っといて今更結婚出来ませんってのは無理があるだろ。そもそも俺は結婚が無しになるなんて一言も言ってないしな」



確かに恒矢は否定も肯定もしてない。
二人が希望を持ちすぎただけ。

けれども話はまだ終わらない。
まだこの言葉には続きがある。
「だが」と一呼吸置いて、恒矢は口を開く。

「俺達は結婚するが、このままいけば仮面夫婦ってやつになるな」

仮面夫婦?
二人が同時に呟いた。



訝しげに目を細める昴に焦点を当て、恒矢が頷く。

「そう、結婚していても、実際は夫婦関係にないってこと」

二人が恋人同士っていう事なら、俺と昴にあるのは、ただ結婚してるって言葉だけだろ。

「でもまぁその間に、昴の気持ちが俺に向く可能性はあるがな」

二人は恒矢の言いたい事が理解できていないらしい。
昴が胡乱な眼差しで、晶太が悲しげに唇を震わせている。



本当に馬鹿馬鹿しい。
ちょっと脅しただけで、こうだ。
もう少しマシな反応は返せないのかと言いたくなる。

恒矢は悪役に成りきって言い放つ。

「俺はもう此処には来ない。来たければ昴一人で来ればいい。どうやったって結婚が覆る事はない。それまで二人でゆっくり話し合えばいい」

二人が恒矢の言葉に目を瞠る。

今まで昴が一人で来るのを禁じていたのに、どうした心境の変化か。
結婚は取り消せない。
という事は、勝者の余裕か。
余裕を見せて、昴の気を惹こうとでもしているのか。
結婚までの期間で、互いの気持ちに整理をつけろとでもいうのか。




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