小説という名の日記B(栞機能無し)
14
「晶太」
口を開き掛けた恒矢を遮り、昴が晶太に話し掛ける。
俯いたままの晶太に、恒矢には聞かせたことのない優しい音色で話し掛ける。
「晶太、俺はお前を愛している。晶太は俺をどう思ってる?王子が言うには、俺達が互いに愛し合っていれば晶太を傷付けないとのことだ。という事は結婚も当然しなくて済む」
なるほど、それが昴の出した答えか。
ならばその挑発に乗ってやる。
驚き顔を上げた晶太に恒矢も告げる。
「そうだな。愛し合っていれば考えない事もない」
堪えきれず晶太の瞳から涙が零れ落ちた。
毎日流しても尽きない涙。
「昴を愛している。だから昴を返して。俺に返して」
「晶太・・・」
晶太が顔を涙で濡らし懸命に訴える。
初めての晶太からの愛の言葉。
自分が問うたとは言え、昴は驚きを隠せない。
けれども懸命に訴える晶太が愛おしい。
晶太に触れたい。晶太を抱き締めたい。
昴は我慢出来ずに小窓から手を差し伸べた。
その手を晶太も大事そうに包み込み、自分の頬をその手にそっとすり寄せる。
「なぁ、二人は相思相愛って訳?」
二人の世界を裂く声。
晶太と昴が見つめ合う。
その後昴が恒矢に視線を寄越して、確りと頷いた。
「俺達は愛し合っています」
はっきりと告げる声に晶太の胸が熱くなる。
互いに告白することはないと思っていた。
幽閉された時でも、互いの想いを口にすることはないと思っていた。
けれども今、昴がはっきりと告げている。
愛していると口に出してくれている。
今、晶太の頬を伝う涙は、嬉しくて自然と溢れ出た涙。
毎日悲しみ嘆き、流していたものとは全く違う涙。
昴の無骨な指先が、そっとその涙を拭ってくれる。
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