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小説という名の日記B(栞機能無し)
12

あれほどまでに追い詰められているのに、二人は行動を起こさない。
二人とも恒矢を忌々しく思っている。

だったら恒矢に怒りをぶつければいい。
口を滑らせればいい。
必ず口を滑らせるだろう。
どんなに黙っていようと思っていても、怒りは我を忘れさせる。

それなのに怒りを押し殺し、互いの気持ちを伝えあわない二人を見ていると、馬鹿馬鹿しく思えてくる。
本当に馬鹿馬鹿しい。



「お腹の子がもう直ぐで臨月を迎える。今日は言わずにいてやったが、今度あいつにも教えてやろうかと思っている」

地下牢からの帰り、恒矢が昴に話し掛ける。
あいつとは晶太のこと。
当然、昴にもそれで伝わる。

昴は顔色を変えた。
もう我慢の限界だった。
これ以上晶太を傷付けてほしくなかった。

「お願いします。もう晶太には何も言わないで下さい」



本当に馬鹿馬鹿しい。
こうなってからでなければ、この二人は動かないのか。
昴ももっと早くに止めればいいものを。
だがそう簡単にはいかせない。

「何故?昴は俺と結婚するんだろ?晶太は関係ないじゃないか」

待っていれば幸せが勝手にやってくるとでも思っているのか。
それこそ馬鹿じゃないかと思う。



「それは・・・」

「言えないなら駄目だな。あいつにもう直ぐ婚礼だと教えてやるよ」

「駄目だ!」

挑発は昴の沸点を超えた。
言葉遣いも構わないほど、恒矢をきつく睨んでくる。
だがそれだけでは足りない。
素知らぬ振りで昴に問う。

「だから何故駄目なんだって聞いてるだろ?」

「晶太を傷付けるな。俺が愛してるのは晶太なんだ」





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