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小説という名の日記B(栞機能無し)
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けれどもこの国は晶太の育った国だった。
晶太が暮らしてきた世界だった。

今更違うと言われても、そういう暮らししかしてこなかった。
次期国王となる教育も受けてきた。

居場所を奪われ、昴まで奪われたら、後はどうすればいいのだろう。
幽閉されても昴が居たから乗り越えてこれた。
昴の存在が晶太の支えだった。

なのに昴が恒矢と結婚する。
世継ぎさえ心配要らない。
二人の結婚は何の問題もない。

昴と結婚するのが自分だったなら、どんなに幸せだったろう。
皆に祝福され、堂々と寄り添える。
それが自分ならどんなによかっただろう。

毎日が辛い。
泣いてばかりいる。
二人の姿を見るのが辛い。
けれども晶太を慰めてくれる者はいない。



晶太の姿を見るのが辛い。
昴が大切にしてきた存在が、日に日に窶れていく。
会いたいと思うのに、一人では会いに行けない。
恒矢に従い地下牢を訪れる度に、昴は晶太に声を掛けたくなるのを堪える。

晶太が傷付いているのが分かる。
どれほど泣けば、あんなに瞼が腫れるのか。

泣くなと言ってやりたい。
小窓から手を差し伸べてやりたい。

だが昴の主は恒矢。
恒矢に逆らうのは国王に逆らうことと同義。
昴が逆らう事で、晶太の身に危険が及ばないとも限らない。

だからぐっと我慢する。
剰え晶太の目の前で交わす口付けも堪えている。



世継ぎは順調らしい。
恒矢への報告時に偶に居合わせれば、それが耳に入ってくる。
世継ぎが産まれた翌日には、恒矢との婚礼の儀が待っている。

世継ぎの件も婚礼の日取りも晶太の耳に入れたくないのに、恒矢が晶太に余さず伝える。
まるで挑発しているかのような口調と眼差し。

何故それほど傷付けようとする。
見ているのが辛くなる。
大事な者を傷付けられれば、主を主とも思えなくなってくる。

事情を知らない父親の千宙が、恒矢との結婚を祝福する。
自分が育て教育してきた次期国王。
自慢出来る存在だと千宙が言うのが、昴には不思議でならない。
絶大な信用があるらしい。
そんな千宙に、自分が愛しているのは恒矢ではないとは言えなかった。





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あきゅろす。
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