小説という名の日記B(栞機能無し)
9
次の日から昴は恒矢の寝所で寝るようになった。
これも恒矢の命令によるもの。
夫婦となったからには寝食を共にしなければならない。
但し食は朝のみ共に。
寝は毎夜共に。
命令により、昴は恒矢のベッドで寝た。
二人で寝ても余裕のある大きさ。
一つのベッドで二人の肌が重なる事はない。
恒矢が誘わない。
命令がないのだから、昴も自ら手を出そうとしない。
朝まで同じベッドで寝る、ただそれだけの関係。
同じ部屋に居ても、二人の間には事務的な会話しかない。
昴はそれを訝しく思いながらも、身体を重ねずに済むことに安堵していた。
夜の余所余所しさが嘘のように、恒矢が昼間昴に触れてくる。
他人の目のあるところで堂々と昴に構う。
誰かが見ている前で王子を拒否することは許されない。
腕を組まれても抱き付かれても、昴はされるがままでいるしかない。
人前で口付けられた時は、抵抗しそうになったが、それも何とか堪えた。
舌を絡める訳ではない。
軽く唇を合わせるだけのキス。
だから堪えられたのだろう。
祝福を受ける恒矢を、昴はただ眺めていた。
昴との婚礼の儀が決まってから、恒矢は地下牢に昴を連れて行った。
お前は俺の夫となる身だ。
これから一人で地下牢に行く事は許さない。
そう言い渡し昴を伴って地下へ行った。
「昴と結婚することになったから」
恒矢を睨み付け昴に微笑んだ晶太へ、開口一番に言ってのける。
晶太の瞳が驚愕に見開かれた。
晶太の前で昴の腕に恒矢の腕を絡ませる。
苦しげに顔を歪め、昴は晶太から顔を背けていた。
晶太の顔が青褪めていた。
「昴、本当なの?」
「・・・ああ、本当だ」
「何で・・・」
「・・・ごめん」
二人の切なげな会話を、恒矢が遮る。
「昴は俺の旦那様となる人だから、一人では此処へ来させない。俺が連れて来てあげるよ」
ね?と昴の顔を覗き込み、その唇に口付ける。
見せつけるように、初めて舌を入れた。
抵抗されてもいいように、頭を押さえて深く絡める。
昴は暫くもがいていたが、軈て抵抗を諦めた。
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