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小説という名の日記B(栞機能無し)
8

昴を急かし、世継ぎを産む女性を連れて来させた。
質素な服を来た控え目な女性。
派手な化粧もせず、地味で凡庸な顔立ち。
けれども類い希なる理知的な女性。
その女性は控え目ながらも、凛とした佇まいを見せていた。

恒矢は女性と二人きりで話した。
世継ぎを産む為のたった一晩の情交。
それ以外では会うこともない。
出産が終わるまでは城で生活すること。
出産が終われば二度と城に入れず、子供にも会えないこと。



女性は黙って聞いていた。
条件ばかりを言われても、最後まで口を挟まなかった。

女性が口を開いたのは、恒矢が条件の提示を終えた後。
理由をお聞かせ願いますか。
媚びを売らない毅然とした眼差しで恒矢を見詰めた。

この女性なら世継ぎを産んで貰うのに申し分ない。
事情を打ち明けても信用出来る。
恒矢の想いとその計画。
初めて恒矢は他人に自分の胸の内を明かした。

あなたはそれでいいんですか。
恒矢の話を聞き終えた女性が一言問う。
恒矢はその瞳を見つめ、ゆっくりとそして確実に頷いた。
それを見た女性は、たった一度の共犯者となることを承諾した。



女性が承諾したその夜に、恒矢は初めての性交を経験した。
誰とも交わった事のない恒矢を、その女性は優しく導いてくれた。
たった一晩の交わり。
翌日からその女性は専用の部屋を宛がわれ、其処で暮らす事となる。
それから後は恒矢と接する事もない。
それなのに女性は恒矢に抱かれた。
まるで恒矢が抱かれているかのような優しい性交だった。

そしてその女性は、一晩の交わりで世継ぎを身籠もった。





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あきゅろす。
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