小説という名の日記B(栞機能無し)
7
国王との毎夕の食事。
余程忙しくない限り、国王は毎夕恒矢と一緒に食事を摂る。
教育の進み具合、その日の出来事、次期国王としての心構え。
父親としての愛情を示そうとしている。
最近で心に決めた事がある。
食事の最中に、恒矢はそれを国王に頼み込んだ。
国王は驚いたが、承知した。
条件を付けて承知した。
そして昴を呼び出した。
国王が昴に言う。
恒矢と婚礼の儀を執り行え。
昴の顔色が変わるのを、恒矢は初めて見た。
王様、お待ちを。
何故。何故ですか。
顔を強張らせ、声は憤っていた。
それもそうだろうと恒矢は自嘲する。
昴には想い人がいる。
ましてや恒矢は晶太を地下牢へ追いやった存在。
頷ける筈がないのも当然のこと。
恒矢が昴を見つめ口を開く。
俺と結婚しろ。
これは国王と王子の命令だ。
王子だけではなく国王だけではなく、二人からの命令。
それは絶対なる至上命令。
昴に拒否権はない。
頷こうが頷くまいが、昴と恒矢の婚儀は決定事項。
それでも昴は言わずにはいられない。
悪足掻きでしかないが、それでも何とか断る理由を探し出す。
俺と王子が結婚しても、お世継ぎが産まれません。
恒矢はそれを鼻で嗤った。
それなら心配は要らない。
俺は子供を作る。
女に産んで貰う。
だから俺の子を産む女を昴、お前が選べ。
これが俺と国王で話し合って出した答えだ。
俺と国王からの命令だ。
恒矢の宣告に昴が観念する。
承知しました。
世継ぎとなる子を産むに値する女性を探し、必ずやその信頼に応えます。
婚儀について態と触れないのが、昴の恒矢への拒絶を表している。
それが恒矢を自虐の嗤いに誘う。
これから宜しくな、俺の旦那様。
宜しくお願い致します。
束の間の沈黙の後、昴が感情を押し殺した声で答えた。
まるで悲鳴のようだな。
押し殺しきれない苦しげな声を聞いて、恒矢はそう思った。
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