[携帯モード] [URL送信]

小説という名の日記B(栞機能無し)
6

けれどもそれも今となっては、恒矢の存在の間違いを知らしめている。
恒矢が来たことで、二人が辛い思いをしている。

恒矢は晶太を地下牢に追いやった存在。
それなのに昴は恒矢に仕えなければならない。
どんな気持ちで仕えているのだろう。
一歩退いた距離。
それが恒矢に対する気持ちなんだろう。
あの距離に様々な思いを込めて。
様々な思いを押し殺して。



日本に帰りたい。
けれども帰ったところで、日本にも居場所がない。
それでも帰りたい。
この世界でないなら何処でもいい。
何処でもいいから帰りたい。

この星に来てから父国王の指示のもと、毎日行われている王位継承者としての教育。
国王との会話。
国王の期待が向けられているのが分かる。
血の繋がった息子を大事にしているのだろう。

けれども。
今此処に晶太と恒矢を並べてみせたら、何方が本当の息子か国王は見分けが付くのだろうか。

全く同じ顔、同じ声。
同じ体格に同じ背丈。

昴ならば二人をいとも容易く見分けるだろう。
けれども国王は見分ける事が出来るのだろうか。
この世界で育ってきた分、晶太の方が余程王子に相応しい。
同じ存在は要らない。



自分の存在が邪魔にしかならないと知った今、これ以上昴に心を開くことは出来なかった。
二人の関係を告げてからも尚、昴は変わらずに恒矢に仕えてくれる。
今までと同じ一歩退いた距離で、恒矢に接してくる。
恒矢の命令に逆らわず、従い続ける。

最近は命令といった命令をしなくなった。
自由な時間を昴に与えれば、その時間は必ず晶太に会いに行っている。
昴の機嫌の良さで、晶太に会いに行ったのだと分かる。
恒矢だから隠そうとしている昴のほんの些細な感情が分かる。
そして恒矢はその度に胸の奥が痛くなる。





[*前へ][次へ#]

6/22ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!