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小説という名の日記B(栞機能無し)
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「知ってます」

なるべく動揺を見せまいとした。
湖南が動揺したとしても裕進は何も思わないだろう。
裕進は何も知らない。
湖南が裕進の何になるのか知る術もないから、こうして冷たい視線で全身を突き刺してくる。
馬鹿馬鹿しい。本当に自分自身が馬鹿馬鹿しい。
それでも動揺を見せまいとする自分自身が、本当に馬鹿馬鹿しかった。

そうか、それなら話が早い。
冷淡な口調を変えず、裕進が口を開いた。

「そのネックレス、晴翔から貰ったらしいな」



一体どういう心算だ。
聖那の恋を邪魔する気か。
あれは俺が手塩にかけて育てたものだ。
あれには真っ直ぐに成長してほしいと思っていた。
それなのにお前はあれに不要な感情を学ばせた。

あれに拾われておきながら、此処に住まわせて貰っておきながら、恩を徒で返す気か。
散々世話になっておきながら、後足で砂をかける心算か。
迷惑かけてまで此処に居座る心算か。

お前には行くところがないのか。
お前の親は何をしているんだ。
親が居ないから行くところがないんだろうが、それならそれで迷惑を掛けないようにしないといけないのではないか。
聖那の恋の邪魔をしないでくれないか。
聖那の成長に害を与えないでくれないか。



聖那の成長を裕進の思い描く方向から遠ざけようとする湖南は、完全に悪者だった。

「晴翔の同情が欲しいのか?それとも晴翔を好きだとでも言うのか?晴翔を好きだと言うなら諦めるんだ。晴翔は聖那の恋人になる予定だ」

聖那や晴翔にはしないきつい物言いで、湖南を糾弾する。

何なんだろう。抑えていたものが溢れ出しそうになった。
聖那、聖那、聖那。聖那ばかり言うが聖那はアンドロイドだ。
裕進の作ったアンドロイドだ。
アンドロイドの恋を応援したって構わない。
だけど聖那は裕進が作ったアンドロイドなのだ。
だけど晴翔だってきっと聖那のことを。



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あきゅろす。
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