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小説という名の日記B(栞機能無し)
38

アクセサリーをしたことのなかった湖南は最初、ネックレスの存在が気になって仕方なかった。
しょっちゅう首元に触れてはその存在を触覚で確認した。

けれども今では違和感がない。
一週間経つ頃には、身体の一部のように溶け込んでいた。
もし外せば落ち着かないくらいで、風呂に入る時も外さなかった。
錆びるかなと思ったがそんな事はなく、変わらず銀色の静かな輝きを放っていた。



「聖那、後で森に行ってラズベリーを摘んできてくれないかい?」

朝食の席、裕進が聖那に話し掛けた。
今までも森で採取出来るものを聖那に頼む事があった。
最初の頃、湖南も一緒に行ったがアンドロイドとは体力の差が激しくて足手纏いになると分かった。
それ以来聖那が用事で森に行く時は、応援の言葉だけを掛けて見送っている。

「うん、いいよ。あの籠一杯でいいんだね?」

「そうだな、何時も持っていく籠に入るだけ摘んできておくれ」

了解と元気良く答える聖那は、補給ゼリーを自分の身体に流し込んでいた。

エネルギー源となる補給ゼリーは決められた分量があるようだった。
過度に摂取しても少なすぎてもいけないらしい。
流し終えるまで聖那は席で大人しくしていた。



朝食を食べ終えたのは湖南が一番早かった。
裕進と晴翔はゆっくりと食べている。
朝がそんなに入らない湖南は、何時も誰よりも早く食べ終えていた。

御馳走様と食べ終えた皿を機械にいれて部屋に戻った。
何時も四人で囲む食卓。こんなに毎日座っているのに、湖南は未だに慣れない。
聖那と晴翔とは何とか接していられるが、裕進の持つ雰囲気が何時まで経っても湖南を緊張から解き放たなかった。

食べ終えさっさと部屋に戻る湖南を、優しく見つめる眼差しがあった。
それは晴翔だったのだが、湖南は何時も振り返らないから知らない。
湖南と湖南を見つめる晴翔を、裕進が凝と見つめていた。



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