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小説という名の日記B(栞機能無し)
33

「何言ってるんだか。僕が居ても居なくてもあの凸凹道、集中して運転してたら疲れるでしょ」

「もしかして心配してくれてるとか?」

「は?馬鹿じゃない?誰が心配なんか。ただあの山道の運転はきついだろうなって思っただけだから」

図星を突かれた気がして、つい憎まれ口を叩いてしまった。
運転して疲れた相手に「馬鹿」は言い過ぎたかなと思ったけれど、晴翔は気にした風でもなかった。
本気だと勘違いしそうな口調と眼差しで、湖南を見つめていた。



「確かにハンドルが取られるからな。でも湖南を乗せてるから事故を起こさないように頑張った」

「何でそんな呆れる事ばかり言えるんだか」

まるで湖南が大事だと言っているように聞こえた。
何時も何時も、何でこんな言い方をするんだか。
晴翔にとって大切なのは裕進と聖那だ。
ちゃんと分かっている。
分かっているのに都合良く勘違いしてしまいそうになる自分自身にこそ呆れたくなった。
苦しくて痛くて辛いのは嫌だ。
だけど更に晴翔は誤解させるような言い方をした。

「理由は何にせよ湖南が来てくれて良かった。一番嬉しいのは湖南に出会えた事だな」

余りにも落ち着かなくて一気にカップの中身を飲み干した。



「はい、もう用事はないでしょ」

飲み終わったホットミルク。
暗に部屋から出て行けと、空っぽのカップを突き返した。
けれどもそれが伝わらなかったのか、カップを受け取ったものの晴翔は全く立ち去ろうとはしなかった。

落ち着かなくて居心地が悪かった。
何故出て行ってくれないのか。
ああそうか、飲み物の礼を言ってない。
言えば出て行ってくれるだろう。

「ホットミルク、ありがとう」

小さかったけど聞こえる程度の声だった。
どういたしまして。そう返ってきたから、実際聞こえた筈だった。

なのに依然として立ち去る気配がない。
其処にいて湖南を見つめている。
それこそ寝る前に湖南を見ると言っていたのが嘘ではないと思えるかのように、晴翔が湖南を見つめていた。



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