小説という名の日記B(栞機能無し)
32
研究所に戻り三人で荷物を下ろした。
おかえり、と帰りを待っていた裕進に、聖那が荷物を置いてただいま、と飛びついていく。
「お父さん、見て。これ買ってきた」
再び荷物を漁り、買った生物を見せていた。
聖那は本当に生き物が好きだね。
アンドロイドを息子を見守る眼差しで見つめている。
聖那も大好きな父親である裕進に、うん、と大きく頷いていた。
聖那は食事を摂らないが、毎回一緒に食卓に着く。
今日も夕食時、皆と一緒に席に着いていた。
街での事を楽しそうに裕進に話しては、晴翔にも話を振っていた。
「今日は早く休みなさい」
疲れがある筈もないアンドロイドを裕進が気遣う。
はぁい、と素直な返事に、裕進は満足げだった。
夕食を終えた後、湖南も風呂に入ってから部屋へと戻った。
何時もより遅く晴翔がホットミルクを持ってきた。
運転と買い物で疲れて寝たのだと思っていたから、晴翔が入ってきた時は少し驚いた。
「まだ起きてたんだ」
「湖南にホットミルクを飲ませるのが俺の一日の締め括り」
「何それ」
「湖南の顔を見てから寝たいってこと」
何時もながら勘違いしそうな事ばかり言う。
そのたびに自分を戒めるから勘違いせずに済んでいるが、気を抜けば何か言ってしまいそうだった。
「今日は疲れただろ?」
「あんな山道を運転した晴翔の方が疲れたんじゃない?」
「いや、全く。湖南と出掛けたのが嬉しくて疲れなんか感じなかった」
湖南はただ座っていただけだ。
座ってぼんやりと外を眺めていただけだ。
ただ座ってるだけの人間が何の役に立つんだか。
運転手の方が何倍もきついと思って言ったのに、巫山戯た発言をされ思わず溜め息が出た。
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