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小説という名の日記B(栞機能無し)
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結局湖南は欲しいものを言わなかった。
聖那は三個自分の物を買って貰った。
晴翔もアクセサリーショップで何かを買っていた。
買い物に来て買わなかったのは湖南だけだった。

「湖南、何も要らなかったの?」

帰りの道中、聖那が話し掛けてきた。
助手席と後部座席に少しとトランクに詰め込んだ荷物の所為で、聖那は湖南と一緒に後部座席で窮屈そうに座っていた。
車が揺れる度に聖那と湖南の肩がぶつかる。
二人がこんなに至近距離に居るのは何だか久し振りな気がした。



「欲しいものがなかったんだ」

「そっか、じゃあ仕方がないね」

「聖那は欲しいものがあって良かったね」

「うん、鳩も欲しかったけど、また今度街に行った時に買うんだ」

「そっか、じゃあ今度が楽しみだね」

「うん、楽しみ。湖南も今度欲しいものがあればいいね」

「さあどうだろう。今日なかったから今度もないと思うよ」

「晴翔も買ってたし、僕も買ったし、湖南だけ何も買ってないよ。今度欲しいもの見つけて買えばいいよ」



最近聖那と話す頻度が減っていただけに、こうして喋るのは不思議な気がした。
何時も晴翔に纏わりついている姿しか思い出せない。
晴翔が仕事の時は話していたが、こんな風に和やかに会話が弾むことはなかった気がする。

嫉妬という感情を学習しつつあるのだと思っていたから、帰りの車内もぎこちなくなると予想していた。
けれど生物を買った事が聖那の気を良くしたのだろう。
元々素直で真っ直ぐに成長したアンドロイドだ。
運んだのは晴翔でも、行き倒れていた湖南を見つけたのは聖那だ。
嫉妬という感情を学習しなければ、明るく無邪気なアンドロイドだった。



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あきゅろす。
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